発行:昭和41年3月頃 佐藤プロ 青春山岳シリーズ3
失恋に打ち勝つため、大岩壁を征服しバンザイ! という単純な話だが、味のある劇画タッチと展開、岩登りの専門的表現で、思ったより楽しめた。
奥日光に沢のぼりに来た桂木恵介。一人の少女と出会い、大雨から洞穴に避難。桂木のスリーピングバッグで一夜をともにする。上野駅で別れる時、彼女はまた来年の今日、あの洞穴の前で逢いましょうと、お互いに名前だけ名乗りあって別れた。彼女の名前は油座久美子。
大雨のため一日無断欠勤してしまい、工場長からしぼられる桂木。その説教から救ったのは同僚の毛利。彼は岩登りをしており、来年は槍ヶ岳の胸壁にアタックすると桂木に宣言する。桂木は工場の寮らしき大部屋で暮らし、久美子との再会を心待ちしていた。
翌年、無事に桂木と久美子は再会する。そしてまた、久美子は来年も同じように逢おうと。来年こそ二人でお互いのいろんなことを打ちあけるの、と久美子は言って別れる。毛利のアパートで、そのことを話す桂木。毛利は、槍ヶ岳のオーバーハングに成功したことを話す。
ここまでが前半。大岩壁はいつ出てくんだよ〜?
翌年、洞穴の前に久美子の姿はなかった。これ以上追いかけない方がいいと毛利に言われたが、それだけを心の支えとして生きてきた桂木はあきらめきれなかった。彼女が詩を雑誌に投稿したと云っていたことを手がかりに古本屋をめぐり、古雑誌から久美子の住所をわりだし会いにいく。
久美子は、今年の秋に結婚するのだと打ち明ける。山の想い出は少女時代の夢として、そっとしておいてほしかったと。桂木は雨の中一人「ばかやろーっ!!」と叫んで、やけ酒をのみ、毛利の部屋へ。叱る毛利に桂木は「弱虫のぼくを大岩壁できたえて下さい!!」「何かに力一杯ぶつかりたいのです!!」と懇願する。
ようやく大岩壁へだな〜!
ハーケンを打ち、アブミに足をかけて渡り、大岩壁を征服。槍ヶ岳の最高峰に立った桂木は勇気がわいてきた。二人で「バンザーイ バンザーイ」で、幕。




