発行:1963年9月頃 若木書房 ひまわりブック188 少女スリラー
「霧の中の少女」といっても花村えい子先生の「霧のなかの少女」とは別物。こちらは “きりのうちのしょうじょ” とルビがふってある。といってもフキダシ中の表現では「霧のなか…」となっているが。。
わたなべまさこ先生風の絵、三条こみち先生のようなダイナミックさはなく、やさしくおとなしめ。それがかえって霧のなかの人のこわさを引き立たせている。まさかこの絵の流れでこわさを感じるとは思わなかった。当時の読者も「ドヒャーッ こわい〜」と感想を記されているが、、コラッ落書きすんじゃねーよ!
青野えり子は霧の山道でまよって、こわい人影を見る。たどり着いたおじいさんの家にとめてもらう。孫娘の早苗となかよくなったが、早苗が家でひろった花は、あのこわい人が持っていたものだった。おじいさんのつくった薬を飲んだ早苗は倒れ、おじいさんはまたしっぱいだったと。(もう大体のストーリーはわかるゼ…)
東京へ帰ったえり子は、おじいさんとお医者さまの会に来た早苗に出あう。早苗は一週間えり子の家に泊めてもらう。今度はえり子一家が早苗の山荘へ招待される。おじいさんはえり子の父母に、早苗のために研究していることを話す。早苗は小さい時、おじいさんのつくった薬をやたらと飲んで中毒症状をおこし、凶暴性をだしたり夜中にパッとおきて歩きまわったりするようになったのだった。おじいさんはそれをなおす薬を研究しているのだが、早苗の体は弱っていき病気はすすんでいるとのこと。
えり子一家が帰る前日の夜、早苗はおじいさんをひっぱたいて出ていく。村人がきて、早苗が牛小屋に火をつけたと。えり子は薬を、おじいさんは銃を持って霧の中へ。銃声がして、えり子の父母と村人がかけつける。おじいさんは石につまずいて銃のひきがねをひいたのだった。それで胸をけがしていて、死んでしまう。早苗に襲われていたえり子は、銃声を聞いて早苗がにげたので助かった。あくる日、村人によばれていったえり子たちがみたものは…湖にうかんでいた早苗のかなしい姿だった…で幕。
薬で人が変わるよくあるパターンだが、最初だけでなく何度も、早苗の変わった顔にこわさを感じさせられた。こりゃあ参った! お見事なスリラー!




