杉本啓子

杉本啓子●すみれを胸に






発行:1966年4月頃 若木書房 ひまわりブック303

明るく脳天気な、ユッコこと岡崎由紀子が主人公。本人も恋に悩んだりはするが、より深刻な悩みをもっている友人・森ちはるの狂言回し的な役どころ。このパターンが杉本先生流かな。かざり気のない普通なユッコが爽やかにがんばるのが非常にいい!

ユッコたちは転校してきたちはるさんの家にあそびにいくが、教育ママがいて感じが悪かった。翌日ちはるは、ごめんなさいと涙を流すが、ユッコはもっとほかにわけがあるのではと思った。

ひとりっ子といっていたちはるが姉と会っているのを、ユッコは目撃する。姉は母とけんかして家をでたのだった。ちはるの母が本をとどけたユッコをせめるのをみて、ちはるは自分も姉とおなじ道をとるとつげる。母は改心して、ちはるは明るくなる。だが、父の仕事のつごうでちはるは北海道へ転校。ユッコが好きだったとなりの慎二は何とちはるの姉と結婚。ショックの連続だったが、一ヵ月後には立ちなおりめでたしめでたし。



杉本啓子●その白い扉を

その白い扉を_01

その白い扉を_02

その白い扉を_03

その白い扉を_04

その白い扉を_05

発行:1967年1月頃 若木書房 ひまわりブック350

先に読んだミサの強烈なキャラにくらべると、こちらは凡庸に感じてしまったが、いや読み進むと杉本キャラはクセはないのに味がある。

山中で霧にまよった和歌子と、その声をきいて助けにきた松村。二人は雨の中をさまよい、洋館にたどり着く。その住人エリーゼは、やむをえず二人を泊めることに。

和歌子はあけるなといわれた白い扉の部屋に入ってしまう。そこへやってきたエリーゼの兄ロベルトは、和歌子の首を絞める。エリーゼが和歌子を救う。大けがを負ったロベルトは湖に身を投げる。

ロベルトは父母の事故死のショックで気がふれて、いったんなおったのだが、白い扉の部屋にある父母の肖像画をみて再発し、一緒にいた友だちが父母を殺したと思い込み、その友だちを殺したのだ。エリーゼは、友だちの死体をふたりで湖になげこんだと告白。和歌子にこの家でおこったできごとをすべて忘れるようさいみんじゅつをかける。エリーゼのことをおぼえていたいと訴える松村には、自分が見えなくなるまでうごけなくするさいみんじゅつを。そして、エリーゼも湖に身を投げる。

松村はエリーゼの絵を個展にだす。それを見た和歌子は知っているような気がしたが、それ以上は松村のことも思い出せないのだった。

前半、霧にまよって洋館へたどり着くまでがよかった。館ではエリーゼ・松村・ロベルトがメインすぎるかな。まあ、
狂言回し的な和歌子の役どころがいいので贅沢はいえないか。



杉本啓子●おにっこ物語

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おにっこ物語_04

おにっこ物語_05

発行:1966年9月頃 若木書房 ひまわりブック331

杉本啓子先生の絵はあっさりに感じてスルー気味だったが、素朴な線に魅力が感じられるようになって、今では非常に気に入っている。この作品の主人公ミーコのような飾らないボーイッシュなキャラが特にいい! 話の展開も非常にいい! ゆっくりと設定紹介から入り、第一部終わり頃に事件が起こり、第二部でしっかり解決する。

五人兄弟の末っ子ミーコはできがわるく、次女のあけみからおにっ子だといわれた。中間テストをがんばろうと兄・姉に教えをこう。長女のかずみはあけみの分まで教えてくれ、自身は徹夜で勉強していた。そのかずみだが、母から千円かりたり、くちびるから血をながしたりと、事件のにおいが。。ミーコの中間テストの朝、かずみはめまいをおこしてしまうが、なにごともなかったようにでかけた。で、第一部おわり。

過度の疲労と睡眠不足でかずみはホームから転落し、電車にはねられる。自己最高の五十点をとってよろこんでいたミーコも病院へかけつける。公園ではユキという少女が新聞でかずみの記事を読んでいた。かずみはBBS(ビッグ・ブラザース・アンド・シスターズ)運動で、ユキのともだちになっていたのだ。千円をかしたり、非行仲間とのけんかにまきこまれたりしていた。かずみの手術は成功。(死ぬにちがいないと思ったのだが、、電車だし、、)ユキやミーコがお見舞いにかけつける。かずみが退院した数日後、ミーコは冷たい次女あけみがいやになり、家へ帰らなかった。むかえにいったかずみはその帰りに、ユキに呼び止められる。たちなおり酒屋で働いているとユキから知らされ、手を握って涙をながす。ミーコは自分のいのちの重さを考えるのだった。

あけみは英語の弁論大会に大切なおまもりを忘れていった。ミーコはどしゃぶりに打たれながら、おまもりを届ける。あけみは感謝してミーコを抱きしめた。ラストは、雨あがり虹のもとミーコが帰っていくシーン。ミーコがくるまえにあけみはすでに弁論しおわっていた、というくだりもいいネ!



杉本啓子●理沙はさざ波






発行:1965年11月頃 若木書房 ひまわりブック282

杉本先生の四つめの長編ということだ。第一部は状況説明的にゆったりながれていたのが、第二部で急に事件が展開しはじめるのは新人だからかな。でも、むれあきこ先生風な展開に感じて楽しめた。絵はもう完成しているしネ。

久美はバーのマダムをしているママに、仕事をやめてきよらかでいてほしいとたのむ。が、ききいれられず、番長グループの洋ちゃんと遊びあるく。こんなことを続けちゃいけないと思いながら歩く公園で、きれいな歌声をきく。その声の主、ちょっとおかしな子理沙ちゃんとともだちになり、久美の心はなごんできた。ある日、学校でよびだされていってみると、死んだはずのパパが! で、第一部おわり。

パパは離婚したことを後悔しているようなので、久美はママをパパにあわせようと思う。デザイナーの晴子おばさんが洋服の採寸にきてくれた際にそのことを話す。次の日、ママはでかけてしまったので、久美は一人でパパのところへ。すると先にきていた晴子おばさんが、離婚の原因は私にあるとパパに告白していた。パパを慕っていた晴子おばさんは結婚した姉がにくらしくてたまらなかった。ある日、姉の机の上に男文字でかいた手紙をおいて、計略どおりに姉とパパはわかれたのだった。(どんな内容の手紙だったか気になるゼ…)

久美は、そのことを番長の長谷さんに話す。親身に相談にのってくれた長谷さんだが、仲間の手術代を久美にだしてもらえないかと考える。怒ってとびだした久美は理沙に八つ当たり。さまよい歩き、また理沙の歌声にひかれる。そこへママがむかえにきて、久美は反省してかえる。次の日、公園の横で交通事故で即死した理沙と対面。久美はさざなみのような理沙ちゃんのうたごえを、おとなになっても忘れないとちかうのだった。






杉本啓子●かべにご用心






発行:1967年6月頃 若木書房 ひまわりブック372

ひまわりブックの杉本啓子作品は、シリアスものとコメディものの2種類あり、これは後者。1967年にはもう少女フレンドで連載をされており、素直な伸びのある線はこなれたもんだ。この作品は雑誌連載分ではなく書きおろしと思われる。

桂子たち3人は、部長の小野くんめあてで文芸部に入った。アコは詩をヨーコは俳句を順調につくっている。長編小説を書くと宣言した桂子はあせってしまい、自転車でかべにぶつかる。と、母や姉が心配するなか頭がポワンとした状態で執筆を始める。その文章を杉本先生がまんが化してみせてくれる。

まほうの指輪をこすった啓子は西部劇の世界へ。グリーン・リバー・スミス相手に、もうひとつのOK牧場の決闘をして勝利をおさめる。
ここで正気にかえるがまだ原稿20枚で、宣言した5、60枚には足らなくてなげく、で第1部終了。

第2部は、買い物の途中小野くんが女の子と歩いているのに目をとられ、かべにぶつかる。
今度は古代ローマ時代、元老院議員の息子と奴隷女のかけおちの手助けをするが2人は刺客に刺されて、、なぜかここで第2部終了。貸本には珍しい3部がある、、連載もののようにも思える切れ目だけど。。

第3部は、2人の死をなげく間もなく私立探偵の助手に。みごと怪盗「白い霧」をとらえたところで目がさめる。「いままでのこと夢だったのね」というオチ。そこで妄想的な執筆からも目がさめる。
書きあげた文章は未熟だが熱気がかんじられる、と小野くんにみとめられ、さらにデートにさそわれてめでたしめでたし。



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