発行:1960年10月頃 東京漫画出版社 バンビブック

バンビブック初期の頃。藤先生についてはこの作品のみでよくわからないが、やや固い絵柄。この後の作品あたりは、こなれていっていい感じになってくるはずだと思う。それでも1960年頃だと貸本がA5判に移行した直後くらいの時代だ。3段組のコマ割りならではのしっかりした線が味わえる絵を定着させてくれた一人になるのでは、と思う。

海辺のおばの家にきていた美智香は、ばあやからの電報を受け東京に帰る。母が行方不明になり、洋品店と家をあけわたすことに。ばあやの家に世話になるがこれ以上迷惑をかけられないと、一人で母をさがしに出る。すぐに母らしき人を見つけ追いかけたところを不良にからまれる。そこを救ってくれた水木青年、美智香にどこかで会ったというので実は兄ではないかと思える展開。さらに彼は記憶喪失の女性も救っていた。美智香とともに病院にいったがすでに退院してしりあいと一緒に帰ったと。

美智香は水木青年のアパートに住むようになった(ばあやの家でなく青年のアパートならいいのか? 洗濯などしてあげているからいいのか!?)
美智香の歌をきいて、水木は作曲家の雨宮先生を紹介する。雨宮は美智香が海で会ったおじさんだった。そして雨宮から真実が告げられる。水木がどこかで美智香に会った記憶は、雨宮の息子一平が描いた肖像画だった。海に行ったとき会った一平だが、そうなんして死んだ。そして雨宮は美智香の父であり、一平は兄だったと。

美智香は父と暮らすようになった。新聞記者である水木は美智香の母を探し出した。記憶喪失の女性がそうであり、黒木という男が店と家をとるために退院につきそったのだった。黒木らは警察に。美智子たちは母にあいにいくところで、幕。

176頁もある本だが、本編はp140でおわり巻末には「星の夜」という短編がおさめられている。それよりも本編の最後の謎解きとか母との再会とかを入れてほしかった。どうもこの時期にはこういうパターンが多い気がする。B6判時代の128頁完結スタイルが尾をひいていたのかもしれない。