なツマグ

最初のデータ行で一番多い「A5判130頁前後」は省略

保谷良三

保谷よしぞう●千鳥泣く夜は






発行:昭和32年12月30日 東京漫画出版社 東京漫画文庫303 B6判 128頁

まさに正統派な長靴型の足! で始まるが、途中から変化してしまい足首のくびれが描かれる。終始一貫してほしかった。それと同時に見応えのあった背景もやや単調になってしまう。でも綺麗な線は一貫しており、ゆるめのストーリーの効果もあり、じっくり絵が味わえる。

東京からおじいさんのところへ帰ってきたチャコ。その母らしき人があらわれる。だが、おじいさんは「かえりなさい」と。自分のためにチャコをすてた人だという。草むらでねてしまったチャコのもとに天使のブーンがあらわれ、それまでのいきさつを物語る。

歌手だったチャコの母。夫を亡くし、とほうにくれ、いなか町へ。チャコを残し自殺しようとしたところを、おじいさんに救われる。まずしくてもおじいさんは二人のめんどうをみるつもりだったが、母は出て行く。

湖玉医院のテレビで、お母さんが歌手をやっているのを観たチャコは逢うために東京へ。だが、わるい男にだまされる。母のもとへ脅迫状が届けられ、それを知った劇場の支配人らしき人が警察へ連絡。チャコはにげだせるが、車にぶつかる。車はチャコの実のおじいさんのものだった。その家でくらせることになるが、記憶をうしなっていた。

実のおじいさんの家ではその娘やおばあさんから冷たくされる。家出したチャコはハゲ頭の人に出会って、いなかのおじいさんを連想し、記憶を戻す。ここまでが、天使の語ったいきさつ。

なきつかれてねているチャコのもとへ、お母さんがもどってくる。おじいさんもゆるしてくれて、めでたしめでたし。

チャコが走った東京の道沿いの家には「望月家」という表札があり、実のおじいさんの家の貼り紙には「モッチャンガンバレ」という文字がみうけられる。保谷先生は望月あきら先生と親しかったのだろうネ。




保谷よしぞう●父泣き母泣く

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父泣き母泣く_02

父泣き母泣く_03

父泣き母泣く_04

父泣き母泣く_05

発行:昭和34年9月14日 東京漫画出版社 人気作家シリーズ7 B6判 128頁

善吉老人と紙芝居をしてまわる京子。寒い中、義父に週間誌売りをさせられていた京子を善吉老人はひきとったのだった。京子は義父と別れない病気のママを心配していた。

義父はぐれん隊の仲間に入り、京子たちの紙芝居を邪魔する。なぐられたた善吉老人はかるいろくまくと打撲で入院。京子のママは義父と別れることを決意し家を出る。義父は質屋に強盗にはいり警察に追われる。まもなく捕まったが、そのことを知らないママは千葉の実家へと列車で向かう。

ママはせきこんで列車から転落。記憶喪失になってしまう。危険率はたかいが、京子と善吉老人はママに電気ショックをあたえてもらうことにする。結果、ママの記憶は戻り、面会にきた義父は改心。ママと京子は義父がかえってくるまで善吉老人のお世話になることに。で、めでたしめでたし。

明るいきれいな絵柄なので、人気作家シリーズに入っているのもわかる。話は、最後の方で記憶喪失になったママが簡単に回復しすぎだ。ま、最初ゆるめで最後バタバタっと解決って、よくある展開ではあるのだけど。







保谷よしぞう●希望の星

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発行:昭和36年9月14日 東京漫画出版社 バンビブック

特筆すべきは、お金持ち時代の島村恵子の数珠つなぎヘアー、宙に浮いているようで斬新〜!

バンビブック(長篇少女漫画)と銘打たれたのが昭和35年2月。ちょうど1960年から新しい漫画発進という意気込みだったのだろう。この作品では、1950年代の丸っこい絵から、保谷先生らしいきれいな絵になり、線にも味が出てきていると感じられる。

新会社をたちあげたが、新しい仕事仲間の山口に金を持逃げされてしまったパパ。一家はパパの以前の部下だった村田家の三畳間でくらすことに。パパは仕事が見つからない。ママは雑誌売りをするが熱を出して恵子が代わりをつとめる。恵子は弟・次男(つぐお)と妹・紀子のめんどうをみたり、村田の妻から用事をたのまれたりして学校へいけない。次男と紀子は村田の息子・ガン太からいじめられていた。

紀子の先生はガン太たちをしかって、遠足のお菓子を買ってくれる。恵子の家とかんけいがあるといった先生だが、今はきかないでくれと。(ママの血のつながりがない弟かなと思ったのだが…)

改心した山口が恵子のパパを社長にむかえたいともうしいれ、島村は金融会社の社長になる。が、いんちき会社でけいさつにつかまる。罪をかぶされそうになったとき、先生があらわれる。先生は山口の息子・信也だった。けいさつに山口の悪事を話し、島村はたすかる。さらに島村の家を買った百万長者の六島さんが、屋敷をかえす交換条件として島村に自分の会社の重役になってほしいともうしいれる。恵子一家はもとの家にもどってこれて、めでたしめでたし。

恵子一家が落ちぶれていく様子が、じっくりじっくり描かれる。こんな調子じゃいつまででも続けられる話になりそうだ。この本は144頁もあるが、ちゃんとまとまるんかいな? と思っていたのだが、先生の正体は山口の息子だったということで、一気にまとまりお見事!(百万長者・六島さんのくだりは虫がよすぎるけど、そうしなきゃハッピーエンドにゃならないか〜)

保谷よしぞう●友情行進曲

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発行:昭和39年2月1日 小学館 小学五年生2月号付録より 新書判 32頁

保谷先生といえば少女フレンドに描かれた明るいカットの印象。この「友情行進曲」の絵柄がちょうどそうだ(ちょっと細川知栄子先生風)。この絵柄で長編が読めないかな〜!? これ以前だとぼんやりした1950年代をひきずる絵になるし、これ以後だとちょっとくどくなってしまうのだ。。

お金持ちのまゆみと友だちになったみどり。お屋敷に招かれていくが、まゆみの友人や母親からお下品といわれ追い出される。まゆみは洋服をもってあやまりにいき、パパの転きんできゅうに大阪へたつことをつげる。みどりは自転車で特急列車を追いかけ、お互いに手をふりあいめでたしめでたし。

まあ話はありがちなものだけど、表情とか雨の中一生懸命に走る姿とか絵がとてもいい(小さすぎるけどネ…)。下段にあるマンガはいらねえな〜。。




保谷良三●野にさく花はしっていた

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野にさく花はしっていた_03

野にさく花はしっていた_04

発行:若木書房 定価240円 ひまわりブック463「アリゾナの白いばら」より B6判 29頁

ひまわりブックも終わり頃、B6判となり巻頭カラーは2色となっている。これに4段組の小さなコマどりが入りチマチマしている。書き下ろしではなく雑誌掲載されたものを縮小して載せているようだ。しかしこれは縮小しすぎ! 天地小口に余白多すぎ! すでに新書判CMコミックスが出ている時代なので、新書判用縮小率と間違えたか、どちらでもいけるようわざと小さい方に合わせたかだが、後者のような。。

エロ劇画家としても有名な保谷先生だが、マンガ・劇画よりも少女フレンドのきれいなカットが記憶にある。その少女フレンドに載った作品集のようだ。「アリゾナの白いばら」は、漫画でウエスタンの本格少女物ははじめてと述べておられ、大好きな作品の一つだそう。次の「ミワのしあわせ」はよくある母娘もの。そして「野にさく花は…」は、じっくりと読んでほしいという、芸能界ものだ。

大芸能会社、東京プロの社長令嬢は後のエロ劇画キャラの顔立ちだ。まだ、エロくはないけど。そのおじょうさんにみそめられ、バンドボーイの二郎はブルーボーンズで売りだす。グループサウンドの新しいスタイルを考えていた二郎はおじょうさんにロボットあつかいされ、東京プロをやめる。同棲していた晴美のアパートにまた戻り、流しをつづけ有線放送に認められるようになった。東京プロがカムバックをすすめにきたが断る。晴美にプロポーズした直後に二郎は刺されて死んでしまう。犯人は東京プロの手下が差し向けたのだった。おじょうさんはそのやくざものを首にして、二郎が好きだったのにと後悔する。野に咲く花は知っていた。少年のかえらぬことを…




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