なツマグ

最初のデータ行で一番多い「A5判130頁前後」は省略

矢代まさこ

矢代まさこ●ピーナッツを一粒






発行:1966年2月頃 若木書房 ようこシリーズNo.20 春の精 洋子の物語

ようこシリーズってのは、若木書房のひまわりブックと同じA5判体裁での矢代まさこ先生のシリーズ。何故「まさこ」シリーズではなくて「ようこ」シリーズなのだろう? 娘あるいは友人の名前からかな。

公園でピーナッツ売りをする洋子は拳一と出会う。自分のことを春の精、拳一は冬将軍の孫・北風小僧だと告げる。

洋子は体が弱くて学校へも行っていない少女で、拳一は少年院を脱走してきた少年だった。無理をして公園へ行っていた洋子は倒れる。拳一は洋子の姉から、洋子は姉と母の会話から、それぞれの現実を知る。

熱をおして洋子は公園へいき、拳一と出会える。拳一は追ってきていた補導委員にたのんで洋子を病院へと。二人は一年後、公園での再会を約束してわかれる。その時の合言葉は「ピーナッツを一粒!」。で幕。

一年後に少年院を出所した拳一と、入院して体が回復した洋子が、再会できる可能性はかなり低い。が、洋子が死んでいく話とせず、絶妙なところで終わらせておられるのはさすが。絵も冴えていて、体が弱いながらも明るく空想好きな洋子が生き生きと描かれている。

あとがきにて「体の弱い少女を主人公にして」という読者の要望にこたえた作品で、ストーリィが平凡だったかもと述べられている。軸はありがちな話だが、春の精・冬将軍の味付けと構成力で、平凡とは全然感じられないネ!



矢代まさこ●愛のつぼみの詩集

愛のつぼみの詩集_01

愛のつぼみの詩集_02

愛のつぼみの詩集_03

愛のつぼみの詩集_04

愛のつぼみの詩集_05

発行:金園社 定価170円 虹文庫No.41

ちょっとプロポーションに不自然さを感じるシーンがいくつかある。顔が小さすぎて腕と脚が太く見えてしまうのだ。。話の方は、三人の少女の悩みがうまく描き分けられていて極上!

藤原みずえは社長令嬢、級長だったが江東梨沙にその座をおわれ書記係に。生徒会帰り、梨沙に一緒に帰ろうといわれたのをひじでつきとばす。けがをした梨沙はなおりきってもビッコをひかねばならないと。みずえは家出をして、M市の喫茶店ですみこみ女給として、先輩につらくあたられながらもけなげに働く。

江東梨沙はビッコをひくようになるほどひどい目にあうのだが、熱心なキリスト教信者で博愛主義。みずえに対するうらみは全くもたない。悩みは親友・冴子が疎遠になりがちなことだった。

樹野冴子は飲んだくれの父と二人暮しで、アルバイトで生計をたてていた。唯一の親友・梨沙がけがをして以来、大ぜいの友だちと仲良くしているのが面白くない。梨沙が学校をやすみはじめると、ひとりぼっちになるので自分も休んで新聞売りのアルバイトをしていた。

古びし聖堂の愛のマリアに通じる部分があるので、M市の教会でのみずえと梨沙の再会は稲妻ビカビカの派手なものになるかと思ったが、みずえから冴子に出された手紙の中でしみじみと語られる、シブい幕切れだネ〜!





矢代まさこ●先生のお気に入り






発行:1965年5月頃 若木書房 こだま5 No.74より

一緒に収められている杉本啓子・高階良子先生の作品には、まだぎこちなさを感じる。ようこシリーズNo.10のあとに描かれたらしいこの矢代先生作品は、もう極上の絵だ。話の方も杉本・高階先生のは深刻なのにくらべ、こちらは軽快なコメディ。

よっっちゃん・タマちゃん・チーコのトリオが主人公の物語はこれが四作目とあり、ちょっとしたシリーズになっているようだ。短編誌ではこういうシリーズ化がいいネ。それがコメディというのもいい。

トリオは新任の峰先生のお気に入りが何か気にかかる。ワンピースかツーピースかブラウスかで意見がわかれる。それと理想の男性のタイプも知りたい。その質問を書いた紙きれを渡そうと思ったが渡せなかった。ぐうぜん峰先生に出会って、お気に入りは自分たちと同じ"たい焼き"とわかり、めでたしめでたし。



矢代まさこ●古びし聖堂の愛のマリアに







発行:1963年7月頃 東京 金園社 虹 No.43 より

p72〜139、この本の後半を占める中篇。さらに最後に頁があまったということで、矢代先生のフリーコーナーまで載っている。

亜沙美は転入してきた美也から古い教会のことをたずねられるが、だれにも入っていかれたくないので教えなかった。期末考査の結果、成績も絵もトップの座を美也に奪われた亜沙美は学校に行かなくなる。登校をすすめにきた美也はその帰り、事故にあい顔と右腕に傷を負う。亜沙美は美也のことを考えながら、いつのまにか教会へ。そこには美也がいて、亜沙美のことを祈っていた。

激しい嵐の描写でやたら盛り上げてくれるなあ、と思っていたら落雷とともに、まさかのマリア様降臨! かと思えるすごいコマがあり、二人はうちとけてめでたしめでたし。

貸本屋から借りて読んだらしい過去の読者も感動したらしくて、p136に感想を書きこんでいらっしゃるが、いやいや「落書きすんじゃねえよ!」と思うばかりである。



矢代まさこ●光の中の子供たち






発行:1963年 東京金園社 虹文庫No.38

矢代まさこ先生というとチャンピオン読者だった私には「ムツゴロウの箱船」だ。ほのぼのとした作品で嫌いではなかったが、他が強烈だったので印象は薄い。「がきデカ」や「ブラック・ジャック」はまだだったが、「ドカベン」「バビル2世」「魔太郎がくる!!」があったからなあ。

この作品は矢代先生の初長編ということだ。短編を含めるとデビューから14作 。にしては、絵も物語も完成度が高い。

親なし子たち8人がボロ家で力をよせあって暮らしていた。 信二・あさっぺ・みゆきの3人が乗った自転車がクルマにはねられる。 はねたクルマの中にいたのは女さぎ師のめぎつね。めぎつねはあさっぺの母親だったのだ。よくある母娘のめぐりあい が描かれるかと思ったがそうではなかった。めぎつねは逮捕される(大人側の事情が描かれないのがいい)。

川でおぼれたチンピラスリのサリィを助けるために飛び込んだあや姉さんが死んでしまう。信二はチビたちを孤児院へ入れようと言いだした。結局、あや姉さんのことを考え、サリィも加わりまたみんなで助け合っていくことに。で幕。



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