発行:1967年5月頃 若木書房 愛と涙のシリーズ21
盲目の少年、二郎を主人公にした作品。小説か映画をベースにされているのだろう、むれ作品の中ではちょっと異色な感じ。盲人センター院長の息子であるたかしは、目の下に深い隈がある独特のキャラクター、むれ作品なので根っからの悪人ではないのだが、なかなか個性的だ。
事故で盲目になった二郎を母はふびんに思い、手術すればなおると告げてしまう。母は盲人センターへ相談にいき、なんとか二郎を通わせることに成功。二郎は仲良くなった麻耶子から点字を教えてもらうが、手術するまでの気やすめだからと身が入らない。たかしは口をすべらせ、二郎の目がもうだめなことを言ってしまう。絶望した二郎は好きな機関車の下じきになって死のうとするが、友人たけしに救われる。自宅にこもった二郎をセンターの指導員本村先生がたずねてくる。先生は自分も盲目なので二郎の気持ちがわかるとうちあける。二郎は感動して、再びセンターに通うようになり、めでたしめでたし。(目が見えるようにはならなかったが…)
本村先生のくだりが唐突で面食らうけど、元はもっとやりとりがあったのをページが足りなくて省略されたのかも知れない。それでも “愛と涙のシリーズ” にふさわしいいい作品だと思う。