水島順

水島順●青い炎

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発行:宏文堂 定価170円 少女スリラー

この作品では、関谷ひさし先生とちばてつや先生を合わせてスッキリさせたような絵柄。スッキリ感は原稿を縮小せず原寸印刷しているところにもよると思うが。あまり可愛くない子どもと、ちょっと冷たい心をもった主人公の少女なのだけど、絵は魅力的だ。

衝突事故をおこした江原は生き残った子どものまゆみをひきとる。妹のさくらは子ども好きではなく、施設にやろうと言ったり遊園地に連れていって迷子にしておいていこうとしたりする。まゆみの身よりがあらわれた日、さくらは落ちてきた窓ガラスが頭にあたるがケガはなかった。その直後、まゆみがうっかり発車させた自動車にひかれるがまたもケガなし。まゆみは柱にぶつかったが、命をとりとめおばの家にひきとられた。まゆみは自分の身がわりになったのだと思い、さくらは子供をかわいがるやさしい少女になった、で幕。

少女スリラーとはいってもそれほど怪奇なことはなく、偶然に起きることが『母のみたまか』ととれる程度。これは、貸本時代後期の怪奇ものとは違う、先行していた宏文堂少女スリラーの味かもしれない。



水島順●さすらいの天使

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発行:昭和31年7月1日 若木書房 傑作漫画全集196 B6判 128頁

水島順先生といえば関谷ひさし先生風の絵がいいのだが、この作品は1950年代のもので、その時代の画風になっている。それでも少しは後の画風に通じるものを感じられなくもない。

終戦の年に母を亡くした京子は祖父のもとを離れ、大阪のおじの家へ。おばにいじめられつづけた京子はついに家出する。親切なおじさんの家に世話になる、、京子っておじさんにはモテるな。だがその妻と娘の由美子にはいじめられる、、京子って。。同じ学校に通うことになったが、由美子にプローチ泥棒にしたてられ、家出。。けなげな書き置きを読んで、妻と由美子は改心。その直後、おじさんは京子が実の娘だと気づく、、名前・年齢からもっと早く気づいてもよさそうなもんだが。。2年後、新聞にのったサーカスの天才少女が京子だと気づいたおじさんたちが舞台へかけつけて、めでたしめでたし。

それまではサーカスの才能なんてまるで描かれなかったのに。。表紙絵にもあるよう、本来はサーカス関連の話だったのでは? それが家出をくり返す悲哀エピソードで埋まってきたので、サーカスのくだりは最後にとってつけたようになってしまったのかも。。



水島順●美しき小道

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発行:1960年11月頃 若木書房 ひまわりブック56

しっかりしたデッサン力。関谷ひさし・吉田竜夫・木村光久先生系の絵だ。

丸美の兄・修は昔の仲間におどされて郵便局強盗に協力する。兄が逃げまわり、丸美は学校でそのことをひやかされつらい。

第一部のあと、たかくらゆり「さくらのママ」という短編がはいる。

第二部では、修は自首。だが今度は、兄がブタ箱だとバカにされる。同じアパートのおばあちゃんの協力で、真犯人2人は逮捕。兄の疑いは晴れ、クリスマスに戻ってきて、めでたしめでたし。

修を思いやる小児まひの姉、責任を感じて辞表を出す父、など大人の世界も描かれるが、丸美もしっかり活躍するので不足は感じない、よくまとまった作品だと思う。



水島順●母はつよく

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発行:1961年4月頃 若木書房

主人公の美智子は関谷ひさし先生風だが、あとの登場人物や背景は劇画だ。少女マンガのひまわりブック初期はこういうのあったんすねぇ。

「母はつよく」というタイトルだけど、母は最初ちょっと出てくるだけで、あとは娘の美智子が父を捜すストーリー。これに直次郎の母の立ち退き問題がからむ。

立ち退かせる理由が、そこに遊園地を作るためって、そんないい話は滅多にないだろうに。。。それにしては、地主にはガラの悪い手下がいるしぃ。。

最後のコマの「苦労につよいお母さんですもの」というセリフでなんとかタイトルと結びついてめでたしめでたし。。

小言を書いたが、絵柄も構成もよくて満足の1冊。



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