水木しげる

水木しげる●悪魔くん世紀末大戦

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発行:2006年11月5日3刷(1刷は2005.5.25) チクマ秀版社 222頁
1987年10月から1988年10月まで『コミックBE!』(光文社刊)で連載された作品の復刻。単行本はこれ以前に光文社からも出ており、この後(2010.12.20)にも徳間書店から発行される。

貸本版 悪魔くん
のファンである編集者が、その続編としてシナリオを書いた。編集者とは、オカルト作家の竹内博先生で、なるほどオカルトに詳しい物語。前作で7年後によみがえるとされていた悪魔くんは、7を3と4に分割して、34年後の1997年に復活とこじつけ、世紀末の舞台とした。

竹内先生が作家活動で時間がとれなくなり、途中から特撮作家の朝松健先生にシナリオがバトンタッチ。なるほど、特撮っぽいバトルシーンがでてくる。家獣という巨大なパイナップル型の使徒が、とびきりユニークな怪獣だ。

貸本版では、世界を救うための「千年王国」の樹立などといっても、マンガの悪者が世界征服を企むのと同じ理屈じゃないか、と思えた。その作品中でも悪魔くんこそ真の悪魔ではという記述もあり、摩訶不思議っぽく面白かったのだが、この作品では悪魔くんは完全に正義の味方として描かれる。

本作品ではソロモンの笛の威力がわかり、ユニークな使徒たちが登場する。敵も色々でてくる。一番の強敵は地獄の四王子かと思いきや、彼らも手をだせない海底のアンドリアス一族が最後に登場して、倒されて終わり。

一番強い相手を倒して、悪魔くんの前途は揚々という納得の幕切れだが、この調子だと最後は「千年王国」が樹立され、悪魔くんはその王となり、めでたしめでたしとなりそうだ。ま、そこまで描かれたとしたら、王制万歳では終わらないと思うが。。




水木しげる●貸本版 悪魔くん






発行:2010年8月25日(1〜3巻とも) 小学館クリエイティブ 全3巻
1963年に東考社よりホームラン文庫として発行された本の復刻。

今年(2010年)、ゲゲゲの女房というNHKドラマの影響で、水木作品を読み始めた人は相当多いはず。ま、それ以前から水木先生は人気があり、この作品も何度か復刻されているが、限定BOXから普及版として抜き出され、発行となったのはTVのおかげだろう。

子どものころから、怪奇・戦争ものは怖くて苦手だ。いまだに水木作品にはなかなか手がだせない。

この作品は、eBookJapanで立読して興味をもったもの。そのまま購読しようかと思ったけど、1巻525円とちょっと高い。実本はもっと高いけど、読み終えた後売れば、うまくすれば1冊525円より安く済むかもだ。また、2〜3巻の巻頭がカラーでないのも不満。ebookでカラーをけちる必要はなかろうが、元が太田出版版のデータだかららしい。貸本の巻頭カラーの印刷技術なんてお粗末なものだが、この悪魔くんでは、かなり見応えのあるカラー効果をだしてくれている。

マンガの電子化については、特に心配しなくても国会図書館が莫大な予算をとって行っている。貸本は、現代マンガ図書館が少し始めているし、あとは米沢嘉博記念図書館が補ってくれれば文句ない。しかし、そのデータを自宅から気軽に見れるのは、最も読みたい層が死滅してからになりそうな。。eBookJapanと提携して、1冊250円くらいで読めるようにならないものかな。


精神的奇形児=天才児「悪魔くん」が、理想社会『千年王国』設立のため、悪魔を呼び出し、世界征服を企むが、志なかばで射殺されて、終わり。救いとして、7年後によみがえるなどとはある。

本来5巻の構想だったのが、売れなくて3巻で打ち切り。ソロモンの笛にどんな力があるのかわからず、最後の方で登場してきた八仙やスフィンクスも活躍せず、尻切れトンボ的幕切れだ。ま、貸本ではよくあること。全体は不思議な迫力でうまくまとまっていて、傑作といわれたり、奇書といわれたりしていることに、納得&満足できた。




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