松尾美保子

松尾美保子●赤い波止場

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発行:1963年11月頃    若木書房 ひまわりブック198

太いしっかりした線で描かれた極上の絵。たぶんこの頃が一番太いのではないか。バレエものでしっかりと筋肉を描かれるようになり、バランスは完璧になってレディースものへとつながっていくが、この頃の線にこそ魅力を感じる。が、そうではないしれっとした絵もふくまれておりこちらはいただけない。夫のクドーシゲオ先生のペンが入っている部分ではないかと思うが。。

マキのママは、マキを生むのとひきかえに死んでしまった。今のママが流産して、退院するまでが第一部。歌手のアンナが今のママと関係あると思わせながら。

第二部では、
友人村井直次の兄が両者のペンダントからアンナのママをつきとめる。やはりマキの今のママはアンナの実の母だった。村井は新聞記者でスカーフを巻いてキザな印象。よからぬ報道をするのではないかと思ったが、アンナに惚れていて誠実に解決へ導く。パパも理解してくれ、アンナはマキのおねえさんにしようと、でめでたしめでたし。

話はあっさりしたものだが、松尾先生のオシャレ感たっぷりな絵で十分楽しめる、、はずなのだが、最初に書いたようにちょっと違う絵が邪魔しているのがまことに残念。。


松尾美保子●木の十字架と女の子

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木の十字架と女の子_03

木の十字架と女の子_04

木の十字架と女の子_05

発行:東京漫画出版社 定価150円 ジュニアフレンド別冊2 より

松尾先生の絵柄は大ざっぱに3つの時期にわけている。初期の固いイラスト調の画風。次は牧美也子先生風になった甘いぽっちゃり顔。そしてガラスのバレーシューズ以降のかっちり完成した絵柄。最後はもっと細かく分けられるはずだが自分としてはこれで十分。

一番好きなのは2番目の時期だが、その次となると初期だ。この作品は初期のもので、高橋真琴先生と星城朗二先生の影響があると思われる顔だち。キャラよりも大変イラスト調な背景と構図に目をひかれる。

ナツコは山で東京からきたミッチーの家来になった。ナツコの父はミッチーの父にあやまってうたれて死んだのだった。だが、なぜか2人はひかれあう。

ラストが落丁していてわからない、、都会にいってしまったナツコの母の行方があかされると思うのだが、、ナツコとミッチーは姉妹というオチもあるかと思うのだが。。



松尾美保子●赤毛のエミ






発行:昭和36年1月15日 光文社 少女お正月増刊号ふろく「まんがのかんづめ」より
B6判 64頁

デビュー時のかたいイラストチックな絵柄から、頭でっかちで目が離れすぎているが華麗でやさしい絵柄へ、変化する過程の作品と思う。縮小されているようだが、かなり細い線が使われており面白い。イラスト調の背景も決まっている!

話もなかなかのものだ。実の子トシ坊ができてから、父はこんけつのエミを可愛がらない。ピーターという男がエミの亡き父から託されたと、エミをもらいにきた。五分五分に感じられ、エミはどちらへいくのかわからなくて、はらはらさせてくれる。

【追記】
同昭和36年、東邦漫画出版社発行の「おせんち日記」にも赤毛のエミは収録された。少女ふろくより半年後くらいの時期、A5判画用紙なので線はきれいになり、エミの髪・背景にはアミが使用されている。


松尾美保子●友情教室





発行:1964年3月頃 若木書房 友情シリーズ ひまわりブック211

1963年にくらべ、絵柄にやや変化のきざし。眼が小さくなり、線はやや軽やかで粘りが減った。横長の楕円っぽかった顔は整ってきてはいるけど、ダイナミックな迫力が失せてきている。友情シリーズということで、小学校児童の素朴な感じをあらわそうとされたのかも。いやそれよりも、夫のクドーシゲオ先生の影響大だと思う。

この頃、雑誌フレンドでは「北風さん」を連載されているが、それも同じように感じる絵柄だった。同誌連載、谷悠紀子「スズラン天使」にくらべ、絵に弱さを感じ残念に思えた。この絵柄はちゃんと進化して「ガラスのバレーシューズ」以降、しっかり芯のとおったものになっていくのだけど、私としては、この辺までかなあ。。

トマ子のクラスに新しい先生と、転校生の小太郎がくる。貧乏でくず屋をしている小太郎は何かとクラスメートと衝突する、が、トマ子だけは味方だ。十日も学校を休んだ小太郎にトマ子は会いにいく。空地のドカンの中が小太郎の住まいだ。サーカスのピエロだった小太郎の父が死んだので、小太郎が代わりにサーカスにでていた。新任の白川先生が小太郎の面倒をみはじめたことも知る。

ひとりぼっちでみじめなのは自分では、と感じてしまったトマ子は十日間、風邪をひいてねこむ。そして、やっぱり小太郎が気になり、サーカス小屋へ。しかし、手くびの関節をおって、やめさせられていた。

白ばら(白川)先生が小太郎の面倒をみたのは、自殺した弟にそっくりだったからで、自分も孤児で苦労したことを話す。小太郎のケンカ相手の健次は、PTA会長の父に白ばら先生がエコヒイキしていると告げ口していたが、先生の話をきいて、改心。小太郎はクラスメートの盲目の姉をかばって、右手を負傷したのだった。

校長先生の家に下宿が決まった小太郎に、みんながくず屋をてつだうと申し出るシーン、で幕。



松尾美保子●ひとりだけのバレエ

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ひとりだけのバレエ

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発行:昭和43年5月1日 小学館 少女コミック創刊号より B5判

この本には新聞の切抜きで、少女コミック創刊号の広告が挟んである。非常に状態の良い本で、おそらく創刊号マニアといわれる方が所有していたのだろう、ありがたい。

記念すべき創刊号の巻頭に掲載されたこの作品。朝子は母親が入院中の双子の妹、夕子にかまっているのをねたましく思っていた。バレエをやめると告げるが、夕子の生きる希望は朝子がバレリーナになることだと知り、発表会の主役になるべくがんばる。夕子は死んでしまうが、朝子の中に生き続けるのだった。

ありがちな悲哀もの。なんとか可愛いさを保っている絵だが、眼はやや凹んできており、足はけっこう筋肉質でゴツゴツさを感じる。もちろん、まとまってきれいな絵に進化してきているのだけど、この後の高学年誌、女性誌へと向っている途中の画風だと思える。

作者は進化して行くけど、たいがいの読者はついて行かず、どこかにとどまるのではなかろうか。



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