さがみゆき

さが・みゆき●はるかなる海鳴りの果てに






発行:東京 金園社 定価170円 虹文庫26

みゆき先生、かなり初期のものと思われる絵。主人公由美子は素直な良い子ではない。1950年代だと誰の作品でも、とにかく主人公は良い子だったのが、進化というか変化してきており、その個性が描かれている。

自分と妹をすてた母をみかえすために、同じ女優をめざす由美子。大部屋での生活がつづいているなか、縁故関係でスターになる人へのはらだたしい気持ちから自分が大女優・園田京子の娘であることを話してしまう。とたんにスターになれた由美子。しかし、親の七光りではないことを証明するため東光映画をやめフリーになると宣言。

由美子は、前後の考えもなしに車にのってフルスピードでとばし、崖にぶつかって重傷をおう。骨折がなおり順調に回復していくかに思えたが、右足のひきつれるようないたみは神経や血管をひどくいためていて再起不能だと。海辺のいなかに戻った由美子はおばあちゃんが亡くなったことを知る。そのあとを追うように遠く遠く海鳴りの果てに消えていった、で幕。

このパターンだと入水していったギリギリのところで、母や妹に救われめでたしめでたしとなる方が普通だと思うが。そうではなく死んでゆくことで、潔いきれいな作品になっている。

最後の浜辺シーンは効果的。だが、同僚のゆき子がスタンドインの事故で死んだ断崖と重ねあわせるように、断崖で死んでもらった方がドラマチックよネ。



さがみゆき●青い星座に夢のせて

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発行:金園社 定価170円 虹文庫No.35

みゆき先生の長編三作目となる作品。地元京都の舞妓さんを描かれている。専門用語もでてきて、なかなか本格的だ。

両親をなくし叔母にひきとられていた由起子は、いじめから逃れるため、母の友人、節子をたよって家出した。節子のもとで、中学校と舞妓になるための稽古に通う。節子の娘、桂子は舞妓になるのをいやがってやめた。節子にかわいがられる由起子には、冷たくあたる。といっても、第1部中学卒業まではツーンとして、節子に告げ口する程度で、ひどいいやがらせは描かれていない。演劇部にまねかれて「夕鶴」の主役をやるくだりでは、当然いやがらせを受けると思ったのだけど、、それを入れるとページ数が足らなくなるからかな!?

第2部、中学を出て1年後、舞妓としてのおひろめの日をむかえる由起子。その日、桂子はお客として友田や同級生をともなって、お座敷にきた。みじめな思いをして、にげだした由起子だったが、友田にはげまされる。最後、桂子が母にしかられて改心してめでたしめでたし。



さがみゆき●奇理子の隠れ家

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発行:昭和41年5月頃 ひばり書房 さがみゆきサスペンス劇場 NO.16

サスペンス劇場も16巻目となると、ホラーよりでショッキングな展開につきると思いきや、ラストはまるで青春もののような美しい幕切れ!

墓からよみがえった奇理子は、生肉を好む妖怪になってしまったと思えたが、これを精神病として最後は美しく、たけしと共に死んでいく。ラストははっきりと『息たえた』とせず、雪の中をさまようシーンで終わりにしたほうが幻想的でいいと思う。



さがみゆき●ふりむいた恐怖

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発行:1965年6月頃 ひばり書房 さがみゆきサスペンス劇場 NO.7

ほくそえむ少女に似た設定だが、あちらほどのミステリアスさはない。

両親の死後、ひきとられたおじにより、時子は精神病院に入れられた。退院してきた時子の部屋に、毎晩謎の女が現れ、殺されかける。交通事故で入院していたおばが退院してきた。その顔は、謎の女だった。

実は、謎の女はおじがやとった看護婦の川瀬だった。おじとその愛人の川瀬は、狂った時子がおばを殺す完全犯罪を仕組んだのだった。時子の友人とその兄である精神科医によって、陰謀はあばかれ、めでたしめでたし。

これをより複雑に発展させたのが、ほくそえむ少女になると思う。



さがみゆき●お墓に手首と指三本

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発行:ひばり書房 定価220円 さがみゆきサスペンス劇場 NO.11

語呂のいいタイトルなので、まさか指三本にまで必然性があるとは思わなかった。不思議な右手と左の指三本は、色んな人にくっついて生きてきたようだ。その人の左手で、右手を切り落とされないように、邪魔をするために左指三本は存在する。。

絵の研究所に入ってきたみち子の才能に嫉妬するルミ子。だが、みち子は不思議な手によって絵を描いていた。火事の事故で、みち子は右手と左指三本を切られて、死んでしまう。

手と指はルミ子にとりつく。墓にはルミ子の、元の手と指が葬られた。。その手のおかげで、ルミ子は少女画家として有名になるが、人をのろったおそろしいむくいかと思うのであった。

みゆきサスペンス劇場は、推理と恐怖ものがまざっているが、この作品はもう純粋な恐怖ものといえる。研究所の先生によせる淡い恋心といった青春もの的な部分も少しはあるけど。



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