発行:東京 金園社 定価170円 虹文庫26
みゆき先生、かなり初期のものと思われる絵。主人公由美子は素直な良い子ではない。1950年代だと誰の作品でも、とにかく主人公は良い子だったのが、進化というか変化してきており、その個性が描かれている。
自分と妹をすてた母をみかえすために、同じ女優をめざす由美子。大部屋での生活がつづいているなか、縁故関係でスターになる人へのはらだたしい気持ちから自分が大女優・園田京子の娘であることを話してしまう。とたんにスターになれた由美子。しかし、親の七光りではないことを証明するため東光映画をやめフリーになると宣言。
由美子は、前後の考えもなしに車にのってフルスピードでとばし、崖にぶつかって重傷をおう。骨折がなおり順調に回復していくかに思えたが、右足のひきつれるようないたみは神経や血管をひどくいためていて再起不能だと。海辺のいなかに戻った由美子はおばあちゃんが亡くなったことを知る。そのあとを追うように遠く遠く海鳴りの果てに消えていった、で幕。
このパターンだと入水していったギリギリのところで、母や妹に救われめでたしめでたしとなる方が普通だと思うが。そうではなく死んでゆくことで、潔いきれいな作品になっている。
最後の浜辺シーンは効果的。だが、同僚のゆき子がスタンドインの事故で死んだ断崖と重ねあわせるように、断崖で死んでもらった方がドラマチックよネ。