楳図かずお

楳図かずお●女の子あつまれ!






発行:昭和54年6月5日3版 朝日ソノラマ 新書判 244頁 楳図かずお秀作選2

月刊なかよしに連載された作品。人気連載だった「ロマンスの薬あげます!」の次の連載で、これも貸本作品をベースにしたコメディ調のものだ。 楳図作品ならどの時期のものでも楽しめるのだが、この時期の線は一番艶 があり魅力的だと思う。

封建的で激しい女性差別のある城下町。弓子は紅玉隊という女性軍のリーダーにまつりあげられる。密かに
武道の腕をみがき、ついに男性軍の白玉隊との大決戦をくりひろげる。戦いの勝負は 隊長同士の一騎打ちに。白玉隊長はボーイフレンドの友彦。だが、ふたりは男女平等を訴え、姿を消す。残された男と女はいっしょになりふたりを探しているうちになかよくなって、めでたしめでたし。

城あとから川原へ続くほら穴が、ふたりの特別な場所となっており、この独特な雰囲気がいい。




楳図かずお●ロマンスの神様

ad9d224b.jpg
ロマンスの神様

2e4d7243.jpg

73ae0fbe.jpg

0bc09c5a.jpg

e3ecf682.jpg

発行:2007年4月7日 小学館クリエイティブ

1964年9月にひばり書房から発行された本の復刻。カバー裏面はひばり版の表紙カバーとなっている。そこまでこだわるなら、本編に色インクを使った方が元に近いのでは。いや、原稿は黒か。。

楳図先生の絵というと、4段組の小さなコマに細かく描き込まれ、永井豪先生とくらべると視力低下するのでは、といわれたほどだが。(この永井作品の例は殆ど見開きで1コマ進行だった魔王ダンテだったりする。。)この作品は、3段組みで大きな絵柄。しかも、素晴らしくきれいで、解説で近田春夫氏がタブロー的魅力があると述べられているのも納得!

主人公陽子は、楳図作品の園児キャラが中学生に成長した姿に思える。表紙のように微笑んでいるシーンは少なく、縦に口を開けて驚いている表情が多いけど、それも魅力的。

p78よりもp36の走り方が楳図先生らしい個性がでている。走り方といえば、松尾美保子先生が後ろに足をけあげ過ぎ、浅丘ルリ先生は関節がどうにかなってるくらい反りかえっているが個性的でいい。

ラブコメの初期的作品ということで、軽く読めて面白い。陽子が拾った3つの願いをかなえてくれる人形。1つめは、クラスにハンサムな男の子、白鳥君が転入。2つめは、その力を確かめるため白鳥君とブーちゃんのキス。3つめは、白鳥君とボーイフレンドになることに使いたかったが、下宿のお姉さまと男を結びつけることに使う。

3つめはかなわないというふうなストーリーを予測していたのだけど、実はかなった。(そうでないと冒頭の「世の中はがめつく渡ろう」が説明つかなくなるか。)お姉さんの好きな人は白鳥君のお兄さんであり、陽子と白鳥君も親しくなって、4つも願いがかなったのであった。




楳図かずお●まぼろし少女

362e8cfc.jpg

e130547a.jpg

38490abc.jpg

1c1d79fc.jpg

発行:2007年3月19日 小学館クリエイティブ

雑誌形式の貸本「虹」に連載された作品の初単行本化。

バレエをテーマに少女マンガに取り組んだと解説にあるとおり、大変目が大きくシンプルで清楚な絵。個性の他に、その時代の画風というものがあるのは確かだ。楳図先生は高橋真琴先生&谷悠紀子先生らの絵を積極的に参考にしてこの作品に反映されている。

不思議の元となる白菊の原っぱは、デビュー作「森の兄妹」の森に通ずると思う。恐怖ものでないと油断していたせいか、ゾッとさせられたシーンもあった。貸本サイズに感情移入しやすい体質になってきたのかも。。

この貸本時代の作品を狙って購入してみたのは成功! 最後まで独特の世界が味わえた。昔からの楳図先生の担当が小学館のエライさんになって気合いの入った復刻・単行本化がすすんでいることは、まことちゃんに喜ばしい!

原稿でなく、印刷物をスキャンして作られた本のようで、マンガショップさんと違い、文字も基本スキャンされたものである。しかし、中には新たに打ち込まれた文字もある。下の写真でいうと、「能」や「感」はつぶれた文字だったのだろう。「未発達な」は差別用語の差し替えかな。元の本と比べて違いを研究している人にはいいだろうけど、私は読んでいてひっかかる。

スムースに読めるよう元の字の中にとけ込ませてほしいものだ。私に文字の処理をやらせてくれれば、どこが打ち込みかパッと見わからないくらいにはできる。すると、これをやった人は時間か技術力がなかったのか!? いやそんなことはなかろう、するとやはりマニアさん向けにわかるようにしてるということか。



楳図かずお●ねむり少女

f8d56b9a.jpg

5a1af195.jpg

発行:1996年10月20日 朝日ソノラマ 【初出:1964年 東邦図書出版社】

楳図先生の作品は、初期ものから最近ものまで、絵柄は変わってきているがどれも満足できる。絵は丁寧で、ストーリーは練られていて、それぞれの時代も味わえ、楽しめ

その中でも、最近特に惹かれるのが、この「ねむり少女」の頃。3段のコマ割りなので、貸本向けだろう。白黒の対比・シンプルなバックに、何と言っても主人公のお人形らしさ。当時人気のあったおしゃれイラスト(竹久夢二・中原淳一・内藤ルネ等)の影響を受けていると思

オリジナルには手を出せないけど、小学館から復刻されているの、少しずつ追っていきたい。

【追記120923】
違うな! 大元はおしゃれイラストの影響かもだが、 金園社が女流作家を登用していた中の谷悠紀子先生あたりの影響が大きい。もう1964年頃じゃ、しっかり楳図先生の絵になってるし。



楳図かずお●夏の終わり

6ba3d0b3.jpg

ace779f0.jpg

発行:2005年9月1日 小学館

先の姿なき招待とはガラッと変わった大人向け作品。緻密な描写、SFともとれる凝ったストーリー。

そもそも楳図作品を読むようになったのは、2000年頃から。(まことちゃんを除く)
それ以前は、絵が恐いだけだと思っていた。何しろ先生は赤白ボーダーでテレビでグワシと登場する、まことちゃんの作者なのだから。永井豪先生の「魔王ダンテ」と比べられて、楳図作品は読むのに何倍も時間がかかり、目も悪くなるなんて言われてたもん
「洗礼」であっと驚くストーリーに感激して、その後、田舎へ帰省する際には列車内で文庫本を読むようになった。細かい絵を、しかも文庫で〜。。。




カテゴリ
月別アーカイブ