なツマグ

最初のデータ行で一番多い「A5判130頁前後」は省略

池川伸治

池川伸治●雨の日の猫橋

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雨の日の猫橋_02

雨の日の猫橋_03

雨の日の猫橋_04

雨の日の猫橋_05

発行:1968年10月頃 ひばり書房 B6判 124頁

表紙をp1と数え、裏表紙を入れてちょうど貸本定番の128頁となる。せこい水増し的ノンブル付け、定価は230円もするのに。。マンガ作品は、p5〜p121に収められている。p6ナレーションに「一頁の表紙の人、この人は私の友達高崎妙子さんです。」とある。表紙とはトビラのことを指すのだろう。そのトビラには "ー5ー" と振られているのだから、編集は気を配るべきだったろう。校正などちゃんとしていなかったんだろうなァ。。

クラスのグループで行う歴史研究のテーマに、妙子の邸の庭にある不思議な猫橋が選ばれた。委員長の勝っちゃん(治とも呼ばれている、勝山治なのかナ)が、その橋を渡るとめまいがして転落、命はとりとめた。妙子の入れたジュースを疑ったトン子が死ぬ。医者のしらべではねむり薬を飲んだらしい。

妙子はトン子の追悼の会を、ふぐ料理店でひらく。そこで佐代が倒れて死ぬ。原因はふぐ中毒だった。妙子を疑うトン子の兄は治とともに猫橋へ。そのそばにある地下水の水で顔を洗った妙子は、顔がドロドロに溶けたようになる。妙子があやしいという推理はあたらなかっと、二人は帰っていく。だが妙子の顔は化粧でつくったもので、ばあやもグルだった。

妙子はストローの中に青酸カリをつめて、細川さんを殺す。次はお君を毒薬の入った氷で殺そうとするが、勝っちゃんとトン子の兄が来て失敗。

疑う勝っちゃんとお君に猫橋のひみつをおしえると、妙子はなわで二人の手足をしばる。動機は、勝っちゃんたちの祖先が高崎家の祖先をしばり首にしたことへの復讐だと。勝っちゃんとお君はめまいをおこし、池に落ちて死ぬ。猫橋のひみつとは、水車と竹音の調和、そして水に写った月の波紋によって、さいみん術がかかるようになっていることだった。

だが、ばあやは「おじょう! へまをやりましたな」と。ラスト、ウ〜ウ〜とサイレンの鳴る中、雨が降ってきて、トン子の兄がコップに残っていた氷をしらべたのだとナレーションが入る。

猫の呪いがかかる橋と思って読んだが、猫の背のような橋、あるいは猫のひたいほどの小さな橋ということだろう。絵も構成も冴えていて、中盤で妙子とばあやが犯人とあかされるのもいい。復讐は、トン子もだが、まずその兄にすべきものだと思うが。。



池川伸治●白笛物語

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発行:1967年12月頃 ひばり書房 伸治シリーズ

音によって笑ったり怒ったりさせる、不思議な白笛を手に入れた音無つた枝。美人の田代京子とあこがれの石田秀樹をわかれさせることに成功。しかし、秘密を知った京子は、笛を奪い、つた枝と秀樹をわかれさせる。

秀樹は大金持ちの山本百合子とつきあうように。京子はうっかり
笛で母を凶暴にしてしまう。笛をうまく使えるつた枝がしずめたが、やさしくなった京子の母は笛を百合子にあげてしまう。

京子はつた枝に笛の夢をみたことを話す。悪い事に使うと恐ろしいことになると。だが、つた枝は信じなかった。

二人は百合子の誕生パーティに乗りこみ、笛をつかって秀樹をヘビやネズミの死骸に食らいつかせ、パーティをぶちこわす。二人は秀樹に秘密を話し、笛を割って捨ててあやまる。が、秀樹は去っていき百合子がよりそうのだった。で幕。

中盤を過ぎても全く先が予想できなかった。結局笛を悪い事に使わなかったこととか、大金持ちの百合子が秀樹を得ることなど、マンガの常識に反するナ。いやよく考えてみると、パーティをぶちこわしたのが悪い事か。その結果、大金持ちなだけでなく二人をパーティに呼ばないほどの性悪な百合子が最後に勝者となることこそ、恐ろしいことが起こったといえる。(まあ、つた枝もかなりの性悪キャラなのだが…)

池川先生は後記で、"今回は、今までのミステリーとはグッと調子も変えて、ユーモアのある作品にしてみました" と述べられている。恐怖好きの人はがっかりするかもだが、私は大歓迎! 絵も、要点をとらえた勢いのあるいい線で、池川作品の傑作といえるのではないか、ってほど池川作品読んでねけど。。





夏川ちさと●いたずら娘

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発行:1962年頃 ひばり書房

夏川ちさとは池川伸治先生の別名。この時代、少女ものだとそれらしい女性作家名の方が売れるということがあったようだ。主人公・明子家の表札は「池川伸治」となっている。。いい絵だけど、池川先生にくらべやや線が細いかな。

明子・佐代子・細子の三人は転校してきたきれいな顔の久保田と友達になりたい。不良っぽい行為だがげた箱に手紙を入れ、久保田に二本松の所で待つと。久保田は時間どおりに来て、友達になることに成功。

久保田の家にあそびに行った三人だったが、バラックの家ややきいもをケーキとよぶ貧乏さがいやになって、佐代子と細子は帰ってしまう。明子は久保田にすごくきょうみがあった。今度は明子の家に久保田が来る。背広を着て、見事にピアノを演奏する久保田。

本当は久保田はお金持なのではと、
明子たちは考えた。それに対し久保田は本当のことを話すと東京の大邸宅に三人を招く。久保田はパパ達が外国に行っている間、のびのびとぼろをきてあばれられるよう転校したのだった。そこへ久保田の父が帰ってきて、下品な友はゆるさんと、明子たち三人を追い出してしまう。明子たちは悲しみ、久保田のことを可哀そうに思うが、しかたないのね、で幕。

う〜ん、、久保田の父が改心するのが筋ってもんだが、現実!? はキビシイ。。このラストは意外だったが、全体的には実に普通な話。。セーラー服と学ランなので中学生かと思ったら、明子たちは小学五年生で久保田は六年生なのが一番意外だったナ。


池川伸治●いたずら大行進

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発行:ひばり書房 定価220円 太陽シリーズ

う〜む、、続き物だ。。だが、予告では次作は「餓鬼娘」となっている、、この作品の続きは??

対立するエックス団とゼット団。
戦争のきっかけはドングリひろいというささいなことだった。暴力にいやけがさしゼット団をぬけていた太郎が団長に返り咲くが、エックス団にこてんぱんにやられてしまう。ゼット団はふくしゅうを誓うのだった、で続く。。

昔の子どもたちの戦争ごっこをスケール大きくシステマチックに描いてある。きれいで独特なシャープさをもつ池川先生の絵にマッチしているストーリーだ。
エックス団とゼット団の抗争は、対立している村同士の大人たちの縮図ともいえる。それよりも、だまされたとはいえ女のために再び暴力に手をそめることになった太郎の結末が気になるな〜。

P121からは、平乃治人「狂人日記」という短編が収められている。



池川千鶴●ひとりっ子

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発行:東邦漫画出版社 定価150円 しらかばブックNo.13

怪奇ジャンルで独特の世界観を展開して人気を得る池川先生だが、この作品はまだ一般少女もの。頭でっかちで足先が小さい絵は後の作品もそうなのだけど、まだ線に勢いがない。大きくくっきりな二重まぶたに憂いを含んだ表情、笑顔の少ない暗い雰囲気が最初から最後まで続く。

別荘にきた正子は、使用人の良男と会いたいが身分がちがうので許されない。父母が東京へ帰ったすきに良男の部屋へいき、海辺やほら穴へもいけたが、女中と家庭教師から会わぬよう
何度もきつく注意される。良男は別荘を出ることを考える。正子が良男の部屋にいる時、父母が一日はやく帰ってきた。父は良男をなぐる。良男と育ての親のばあやは別荘を出て行くのだった、で幕。

175頁もある長編だ。舞台はほとんど別荘、あとは周辺の海辺とほら穴が少し。雨も効果的に使われあきさせない。それにしてもなかなか自由に会えない正子と良男がじっくりじっくり描かれる。舞台が変わり話がどんどん進むのより、これはこれで深い印象が残っていいかもしれない。



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