発行:東邦漫画出版社 定価150円 しらかばブックNo.13
怪奇ジャンルで独特の世界観を展開して人気を得る池川先生だが、この作品はまだ一般少女もの。頭でっかちで足先が小さい絵は後の作品もそうなのだけど、まだ線に勢いがない。大きくくっきりな二重まぶたに憂いを含んだ表情、笑顔の少ない暗い雰囲気が最初から最後まで続く。
別荘にきた正子は、使用人の良男と会いたいが身分がちがうので許されない。父母が東京へ帰ったすきに良男の部屋へいき、海辺やほら穴へもいけたが、女中と家庭教師から会わぬよう何度もきつく注意される。良男は別荘を出ることを考える。正子が良男の部屋にいる時、父母が一日はやく帰ってきた。父は良男をなぐる。良男と育ての親のばあやは別荘を出て行くのだった、で幕。
175頁もある長編だ。舞台はほとんど別荘、あとは周辺の海辺とほら穴が少し。雨も効果的に使われあきさせない。それにしてもなかなか自由に会えない正子と良男がじっくりじっくり描かれる。舞台が変わり話がどんどん進むのより、これはこれで深い印象が残っていいかもしれない。