浅丘ルリ

浅丘ルリ●月光の女






発行:1967年9月 東京漫画出版社 怪奇ロマン青春篇

"怪奇ロマン青春篇" と銘打たれている。これまでの少女スリラーと青春ものを融合させたものかな。青春ものを受け持つ東京ロマン社から出ていそうだが、怪奇ものを受け持つ東漫からだ。絵はもちろん冴えていて、大人っぽいデザイン的描写も多い。

尊属殺人事件をテーマにしていることにより、1967年10月に東京都青少年対策委員会から作者・出版社に警告がなされた作品。尊属殺がテーマかなあ? そうとれないこともないけど。。今では尊属だからといって罪が重くなることはないが、当時は描かれることもタブーだったらしい。

殺人者として追われる昇平をすくいにあらわれた梨花。昇平が犯人でないと信じるといい、昇平を刺す。自分ももう生きていられない、さっき父を殺してきたと。さらに昇平が疑われていた晴美・玲子殺しも自分だと告白。二人は湖の底へ、、え、これじゃ全員死んでP20で話が終わっちまうぞ。そのとおりで、それまでのいきさつが描かれるのが本編。

昇平とつきあっている梨花は太陽が沈むまでに帰宅しなければならなかった。ある日、晴美・玲子が梨花を小屋へ閉じ込める。暗くなってから昇平にすくわれ帰宅。父がきびしいだけで、オオカミ女になるというふうなことではなかった。

梨花の父がやとったチンピラにいためつけられた昇平は、梨花をさけるようになる。自分を母とまちがえ花枝とよんだりする異常な父の秘密をしりたい梨花は、ばあやから言われた町はずれの赤い屋根のちいさな家に。そこには顔を見せない占い師がいて、父の秘密を語る。

結婚するまえから別の好きな人がいた梨花の母。とうぜん結婚生活はうまくいかず、逃げようとした母を父は殺したのだった。占い師は、ばあやのお梅で、梨花が父から逃れられることを願って話したのだったが。

ふしだらな母と狂人の父の子という自覚をもった梨花は、晴美を殺し、玲子を殺し、二本のナイフは昇平の部屋の窓下へ。そして、夜になるとしのび出ていくことをきびしく追求してきた父をも殺す。

ラスト、次々と人を殺していく梨花があやしく美しく、カッコイイっすネ〜。やっぱテーマは、このカッコよさだな〜♪




浅丘ルリ●優等生とはねかえり






発行:昭和39年6月頃    東京漫画出版社 浅丘ルリシリーズ

浅丘ルリシリーズは途中で通し番号がなくなる。この本がそうだ。それだけだと思っていたが、死神の使者が31とあるように後年また番号表記が復活している、、じゃあこれは何番だか気になるなぁ。。

優秀な姉に対して、はねかえりの妹・偲。死んだといわれていた母が伊豆にいることをつきとめる。会えたのはよかったが、母は宝石や時計の密輸をやっている悪い人だった。

父への誕生日プレゼント。姉マリ子は学年で一番になったこと。
偲は高価な品を贈って怒られる。頭にきた偲は、姉を母に会わせる。優秀な姉にも悪いママの血が流れていると、つきつけたのだった。姉はショックで九州のおばのもとへ。偲は北海道のおじのもとへいかされるはずだったが、ショックで入院した父から自分のそばにいてくれといわれ、めでたしめでたし。

浅丘作品も数読んでくると、ある程度先が予測できる。冒頭の偲の行動は、母に会うためだとわかったし、海辺の地で怪しげな母がやっているのは密輸だということまで当たった! 姉妹は血がつながってないのではと思ったが、これははずれた。。

友人おもいのデカ・チビ・ノッポのトリオが全体を楽しくしてくれている。人物はノリのいい線だし、幾何学調の背景もいいネ。

浅丘ルリ●死神の使者

死神の使者_01

死神の使者_02

死神の使者_03

死神の使者_04

死神の使者_05

発行:1963年12月頃 東京漫画出版社 浅丘ルリシリーズ31

結婚前から不気味なできごとに襲われる良子が主人公といえるが、少女シリーズだからか妹の麻子が活躍する。落ち着いた雰囲気のお姉さんより、活発な麻子のほうがいいけど、その分怪奇色は薄くなる。麻子と同年代でライバル的なミル子も登場する。うわさのミル子と名前だけが同じ、浅丘先生のお気に入りネームなのかな。

入水自殺した女がよみがえって、良子の周辺で不思議なできごとを起こす。金持ちの老人から財産を横取りしようとして、良子に邪魔されて死んだ女の妹が、犯人だった。ミル子は死んだ女の娘。自殺にみせかけた死体は別人だった。

超常現象は探偵もののように解きあかされる。しかし、怪奇な雰囲気をだすためだろう、デザイン的な表現がさえている。




浅丘ルリ●不死鳥






発行:東京漫画出版社 定価220円 少女スリラー 幻想と怪奇

貸本時代末期、浅丘先生の怪奇もの。少女もの→怪奇もの→青春ものと移っていかれ、官能劇画もので小坂靖に改名される。

落雷で生じた炎にまきこまれ三奈は火だるまに。ところが、火傷もなく生きていた。だが、自分が焼け死んでいく幻想に悩まされ、わめき狂いとりみだす。何とか平静をとりもどし、まず妹にあやまり、次に友人春子宅へ。春子の兄は、落雷事故を目撃していた。魔女といわれた三奈は凶暴化して、人の血を求めるようになる。投身・服毒・入水自殺を試みるが死ねない。

母に自分の出生を確かめると、実の母は父の妹・和江だったとあかされる。和江は夫の仕事のため長くイタリアに住まねばならなかった。なれない外国生活でノイローゼになり、不死鳥をまつってある炎の宗教にこる。三奈が生まれたあと、発狂して焼身自殺。夫もあとを追うように亡くなったのだった。真実を知った次の日、三奈は姿を消す。十年後、山奥の深い谷底に住むみにくいひからびた少女が、というエピローグで終わり。

絵は文句なしだが、話はこんなんでまとまるのかという進行。。が、p128で真実が明かされ、なんとかきれいにまとまった。

落雷にあう山中とか入水する湖などあるのだが、メインは小さな町内に思える。山や湖もすぐ行けるくらい近いもよう。壮大な不死鳥伝説にまつわる物語にしてはどうも舞台が小さい、と感じてしまうヨ。。



浅丘ルリ●椿の手帖

椿の手帖_01

椿の手帖_02

椿の手帖_03

椿の手帖_04

発行:1962年1月4日 東京漫画出版社 浅丘ルリシリーズ5

ミステリー仕立ての作品だ。曾野悦子は不思議な少女がおとした手帖をひろってから、誰かにつけられたり自動車にはねられそうになったりする。家出をしていた姉とめぐりあい、結婚して幸福そうなので安心した。強盗に押し入られ手帖を渡すが、何も書いてないのを見て他にはなにもとらずその男は去った。悦子に知らせもせず、姉が引越してしまう。一週間後、姉は悦子に金をかりにくる。夫の敏郎がいなくなり、安アパートに引越し会社勤めをはじめたのだった。

姉はその安アパート
に悦子を呼び出す。父親が会社に5万円をもってきたのは、悦子が自分のことをバラしたからだと確認するためだった。そこへ不思議な少女がやってきた。おお! 忘れていた、、中盤は姉妹の物語だけになっていたところに見事な再登場だ。少女は敏郎からの手紙をもってきたのだった。手紙にはだれか悪い人に監禁されているらしいことが書かれていた。

不思議な少女は今度は悦子の家を訪れた。敏郎が殺されたことを知らせに。少女は孤児で、にせ札づくり一味のボス夫婦にそだてられたのだった。敏郎は印刷技術をみこまれ仲間にさせられた。一味は秘密をまもるため仕事がおわったら敏郎を殺す予定だった。少女はそのまえに逃がしたつもりだったのだが、みつかって撃たれたのだ。少女は警察に電話し一味のかくれがを知らせてから悦子の家にきた。手帖をぬすみに強盗に入ったのはにせ札づくり一味からおいだされた男で、一味のかくれがの手がかりがほしかったから(ウ〜ム、この男が敏郎と思ってたのだが)。去る少女を悦子はおいかけるが、女中に止められる。それよりもと姉に事実を知らせにいく。翌日も心配で訪れると、姉はガス自殺をしようとしていた。姉は悦子のおかげで命をとりとめるが、不思議な少女は日本海にめんしただんがいから身を投げていた。

浅丘ルリシリーズ初期の作品。主人公はやや面長で、まだ浅丘作品らしくなく、小坂靖博時代の名残りがある。話の方は重い内容でこれもまだ浅丘作品らしくないが、142頁もあるので尻切れにならず、しっかり完結していて読み応えがある。



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