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発行:昭和31年9月1日 講談社 なかよし九月号ふろく A5判 82頁 
原作:吉屋信子

ふろくにもかかわらず、ハードカバーがほどこしてある。高くつくと思うが、当時はこれが売りになったのかな。

貧しい漁師の娘として育ったしのぶは、実は大金持ちの大丸家のおじょうさんだったという話。

いじわるをするちづ子は、実は漁師の娘とわかり簡単に改心する。これはよくあるパターンだが、こういう敵役さんはもっと真剣に恥を知り、悩んでほしいものだ。。

サイドストーリーとしてある、しのぶのボーイフレンド新太郎が温泉を掘り当てるくだりは、余分な気もする。少女小説の大家である吉屋信子先生の原作なので、本来は話に厚みを増す効果があるとは思うが。

オオトモ作品だが、原作つきだからかヒロインの名は、まりちゃんではない。ビー玉のような光沢のある大きな眼。強弱のある線に見えたが、よく見ると均一な細い線が基本で、人物の輪郭だけ太い線にして、引き立たせている。ていねいで好感がもてるが、その他の登場人物はどうにも古いマヌケキャラに見えてしまう。。(50年以上前の作品なので古いに決まっているのだが…)

特筆すべきは、巧みに描きこまれた背景描写! 定規を使わない、丹念な細線がつらなる。この背景と人物のハーモニーが一番の見どころだ。

さらにスクリーントーンが効果的に使われている。この時代、スクリーントーンはあったのか。西たけろう先生ブログには、昭和34年にはあったがアミ部分を青鉛筆で塗るのが主流だった、と書かれていた。が、昭和31年ではどうだろう。まあ、明暗がはっきりな紙でも貼っておけば代用になるのだが、この作品のはスクリーントーンにちがいないように見える。