発行:東邦漫画出版社 少女の悲しい漫画

表紙・背表紙では "母えの贈もの" だけど、トビラと目次では "母への贈りもの" だ。後者の方が正しそうだが、漫画大博物館のルールに従い表紙のタイトルを採用しておくか。奥付にはタイトルも作者名も定価も記してない。。貸出票は貸本屋さんが記入したものだが、"母えの贈りもの" となっている。。

ページ数が120頁しかない。発行年が記してないが、貸出票によれば昭和38年6月8日だ。定価は予告にある本にならえば150円。当時は協定があったはずで、昭和38年頃だとだいたい136頁で170円。まあ比率的にはあっている。けど予告にある「さくらの咲く頃」は150円で160頁なんだがな。。

主人公、速水エミの顔だけが谷悠紀子先生タッチだ。その他の登場人物は当時の劇画風。エミの顔に注目しながら読むと、なかなかひきこまれる。

エミの作文が一等に入選した。作文に書かれている苦しかった日々をふりかえる話。毎日酒ばかりのんで働かない父は、母の貯金通帳をもって家出。三年ぶりに父にであったエミは家へかえるようすすめる。エミのたのみで母と兄は父を受け入れる。父は小さな会社のりんじ雇いになり、小さな幸福が半年ほど続いた。

母はいい仕事口があるかもと父に同窓会への出席をすすめる。出席した父はみじめになり、ぬけだして酒をのみ、女にからんで警察のやっかいに。それが会社にばれてクビになる。母はまたバーにつとめはじめる。兄、幸夫は両親をけいべつしてぐれていき家を出る。新しい仕事がみつからない父はまた酒におぼれて、歩いていたところをクルマにはねられ死んでしまう。

エミは母と、苦しいことがあっても負けないことをちかう。そして「母の涙」という作文が一等に当選。父も天国でよろこび、兄は目がさめて帰ってくるでしょう、で幕。

作文が入選する以外、希望のない暗い暗い話だ。。しんみりとも感じさせず、キレのいい絵だけがひっぱってくれる。もし、エミの顔が谷先生タッチでなく他人物と同様だったら、つまらない作品としか思えないかも。。