むれあきこ

むれあきこ●星空の天使

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発行:1967年5月頃 若木書房 愛と涙のシリーズ21

盲目の少年、二郎を主人公にした作品。小説か映画をベースにされているのだろう、むれ作品の中ではちょっと異色な感じ。盲人センター院長の息子であるたかしは、目の下に深い隈がある独特のキャラクター、むれ作品なので根っからの悪人ではないのだが、なかなか個性的だ。

事故で盲目になった二郎を母はふびんに思い、手術すればなおると告げてしまう。母は盲人センターへ相談にいき、なんとか二郎を通わせることに成功。二郎は仲良くなった麻耶子から点字を教えてもらうが、手術するまでの気やすめだからと身が入らない。たかしは口をすべらせ、二郎の目がもうだめなことを言ってしまう。絶望した二郎は好きな機関車の下じきになって死のうとするが、友人たけしに救われる。自宅にこもった二郎をセンターの指導員本村先生がたずねてくる。先生は自分も盲目なので二郎の気持ちがわかるとうちあける。二郎は感動して、再びセンターに通うようになり、めでたしめでたし。(目が見えるようにはならなかったが…)

本村先生のくだりが唐突で面食らうけど、元はもっとやりとりがあったのをページが足りなくて省略されたのかも知れない。それでも “愛と涙のシリーズ” にふさわしいいい作品だと思う。



むれあきこ●潮風はあまずっぱい






発行:1963年9月頃 若木書房 ひまわりブック190

けっこう複雑な物語だ。親子ものだが、母親は死んでしまったので父娘もの。話をわからせるためだろうけど、父親主体で姉妹の描写は少なめだ。主人公が誰かと言いにくい感じ。もちろん、主人公は三姉妹なのだろうけど。

ブラジルから6年ぶりに日本に帰ってきた高倉功。7年前に事業に失敗し、一家でブラジルへ行くつもりだったのが、おばに反対されひとりでがんばって成功してきたのだ。だが、妻はおばのすすめでお金持ちの尾崎と再婚し死んでしまった。高倉は尾崎に会い娘たちを帰してくれとたのむ。が、尾崎は承知できなかった。

おばは会社がつぶれそうな尾崎よりも、高倉の方がお礼をくれそうだと末っ子の桃子を高倉に会わせる。次の日、桃子は次女の圭子と高倉のアパートに会いに行く。そこで圭子は自分たち家族が写った写真を発見。それを持ち帰り、長女の美耶子にたずねる。美耶子は父だとわかって、高倉のアパートへ行き尾崎をひとりぼっちにしないでとたのむ。高倉は娘たちを尾崎にたくし、ブラジルへたっていった、で幕。

コマは大きく線には伸びがあって気持ちよく進んでいく。で、最後の方でやっと美耶子が父と会う。こんなじゃ尻切れになるのではと思ったけど、やや駆け足ながらちゃんとまとまってくれた。


むれあきこ●心の小夜曲

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発行:昭和33年4月10日 若木書房 傑作漫画全集435 B6判 128頁

「小夜曲」は、表紙では「セレナーデ」、扉では「さよきょく」とルビがふられている。サーカスの少女の2ヶ月前の作品で、こちらは足首のない長靴足だ。

母をなくし、たよる親類もないかなことみやこ。姉妹はれいこの家にひきとられる。れいこの母はやさしかったが、れいこからは女中あつかいされる。みやことれいこはヴァイオリンの競演会に出ることに。出番が先のれいこはみやこの曲を演奏する。みやこは困惑するが自分の曲を心をこめて演奏する。人々を感げきさせ、優勝したのははみやこ。パリへの留学へ立つ羽田飛行場に、改心したれいこが花をもってあらわれめでたしめでたし。

1950年代のB6ハードカバー判では、少女小説をなどを基にしたと思われ、波乱万丈のストーリーとなっているものが多い(絵はギャグというか手塚・ディズニー調なのだが・・・)。しかしこの作品は、父親は実は生きていて…などという小説っぽい展開はなく、ラストの競演会にむかってひたすら進む。枝葉が付くより、むれ先生らしいひたむきさが感じられてイイ!



むれあきこ●サーカスの少女





発行:昭和33年6月20日 若木書房 傑作漫画全集 B6判 128頁

この本は、eBookJapanにて提供されていたが、525円は高い、もっと値下がりしろ、と思っていたら"都合により終了"…楽天ダウンロードに移行したと思ったら、それも終了。。この「サーカスの少女」はもういいんだけど、「虹よふたたび」と「なぎさの乙女」が、なくなったのが痛い。デジタルだから、在庫になるわけじゃなし、またどこかで復活するとは思うけど、じゃあ何で終了したのかと思うと。。。

初期の作品だろうから丸っこい絵だが、十分むれ先生らしさが味わえる。母親の入院費のためにサーカスに入団した洋子が、つらい目にあいながらも最後は空中バレーを成功させる話。

サーカスをあつかった映画か小説を下敷きにされたにちがいない。洋子にきびしくあたる先輩やすよや団長の仕打ちは、プロとしてのきびしさからの行為だったはずだ。が、むれ先生のアレンジか省略か、ただの性悪と私利私欲にかられた人間として描かれ、改心する。改心はともかく、ただの意地悪・金儲け主義の方がリアルではあるなあ、と思った。。



むれあきこ●三ばん目の星

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発行:1964年12月頃 若木書房 愛と涙のシリーズ4

話は短編に毛のはえた程度で、もの足りなさを感じるが、そのかわり絵がいい、線が実にこなれておりたのしめる。

5人兄妹の真ん中の桃子は何かにつけ、損な存在なのが悩みだった。友人の由美のいきつけの洋裁店でワンピースを作る約束をしたが、母はそれをゆるさなかった。気まずい思いをして断りにいった桃子は、洋裁店のママと仲良くなる。しかし、母はその人とつきあうより子供同士仲良くしろと。やきもちを焼いた由美は母親に告げ、洋裁店のママも圧力をかけられていた。桃子の思いちがいで、洋裁店のママとわかれるが、お互い何かを悟って、それでよかったという感じ、で幕。

何を悟ったのかな、社会の圧力に負ける結末な感じもするが。



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