発行:曙出版 定価220円 左馬一平雪の夜話 蛇道秘録

う〜む、拙者どうも時代劇は苦手でござる。。けど昔、何かこういった貸本系のを参考にイラストを描いた覚えがあるでござる。(上手くいかずすぐやめたけど)いきさつが思い出せないが、気まぐれに買った貸本の非情な表現が気にいったのではなかろうか。。それにしても今だに時代ものは敬遠しがちでござるなぁ。

さて、左馬先生じゃが「さま」と読むらしい。「ひだりうま」と読んでこそ縁起がよいものであろうに、まあこの作品など縁起のよいものではないのじゃけど。

赤犬は伊賀出身の忍者だが、仕える殿の伊賀攻めに協力する。仲のよかった女・蜂尾を助け出し、蜂尾の男・地虫をやっつけるためでもあった。

赤犬の策が成功し、蜂尾と女忍者は捕えられた。赤犬は夢をみているようなきもちで女三人にかわるがわるからだを吸われ、体内の精気が吸いとられたようになった。これは彼女らの復讐で、伊賀の秘法吸精術であった。赤犬は男にして男にあらず、な状態になってしまった。

次のいくさで赤犬は決断がつかず逃げ出し、軍は敗北。地虫にさそわれ、伊賀再建のため故郷へかえる。伊賀では地虫と蜂尾が寝た布団を干すという屈辱的な仕事を命じられる。地虫と争うが投げとばされ、まるで相手にならない。翌日から、他の家の布団も集めて干しはじめた。

やがて地虫と蜂尾は体に変調をきたす。風上に干された布団からのきたない埃を吸わせられ、喉と肺をやられたのだった。赤犬は弱った地虫を斬りつける、その瞬間地虫は蜂尾の首を斬つ。その首はみるみる老女に。吸精術をかけたときにすでに婆になっていたのだ。赤犬は「蜂尾はわしの女だった」と言って、その首をかかえて去っていくのだった、で幕。

主人公の赤犬も含め、皆私利私欲で生きる非情な物語でござる。ドキリとさせられる場面もあり、テンポもよく、ぐいぐい読まされた。たまにはこういう作品もよいではござらぬか…!?