柿原輝行

柿原輝行●山の彼方の空遠く

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発行:昭和三十一年二月十日 東京漫画出版社 B6判 東京漫画文庫24

涙のおどり子
が昭和33年、悲しき白鳥の歌が昭和32年、そしてこの作品は昭和31年。このようにさかのぼると、絵柄がかなりさし絵に近くなってつまらないのでは、と思ったがそうでもなかった。確かにさし絵っぽくはあるが、十分マンガとしての味がある。

みゆきと母は、空襲で家を失う。八百屋に世話になるが母がたおれる。母は入院し、みゆきはおじのもとへ。おじは外国へいってしまい、その妻と娘のれい子からいじめられる。

音楽の先生はみゆきの兄の親友で、色々世話をしてくれ、希望ができた。

溺れたれい子を助けて、その母も改心。みゆきは音楽コンクールで一等をとり、歌手デビューが決まる。

戦地から兄が帰ってくるが、それをひと目みて、母は死んでしまう、で幕。

単なるハッピーエンドではなく、母親が死んでしまうので、ひきしまっている。



柿原てるゆき●悲しき白鳥の歌

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発行:昭和32年5月25日 泰光堂 A5判 ハードカバー 96頁

この作品は涙のおどり子の前身といえる。ストーリーも登場人物も同じだが、回想シーンから始まるといった工夫はなく、時系列に沿って話は進む。96頁しかないが、B6よりひとまわり大きいA5判で、1頁には大体8コマあるので、同じくらいのコマ数だろう。

涙のおどり子が素晴らしかったのは、基になるこの作品があったからこそだとわかった。最初にこの作品を読めば、作者が挿絵出身かもと思えたかも知れない。こちらも非常に達者な絵だし、装丁は豪華。1色ページにしても、普通のアミとダブルトーンの2種類が効果的に使用されている。

けど、どうしても同じ作品に当たってしまった残念感はぬぐえない。1950年代とは相性悪いとさえ思ってしまった。。




柿原輝行●涙のおどり子

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発行:昭和三十三年九月三十日 東京漫画出版社

ハードカバーでA5よりひとまわり小さいB6判。昭和三十三年九月三十日発行と明記されている。後の貸本では発行年月日はなくなるので、税金対策のためわざとなくしたというのは本当かもしれない。

さて、この作品はいわゆるバレエものかな。はるみの母は大阪へ働きに出る。空襲でおばさんともいきわかれ、拾ってくれたおっさんにサーカスに売られる。そこを出て世話になったおじいさんが死ぬ。浅草のおどり子の世話をしていたのが実の父。。父はおじいさんの曲を完成させて、はるみを本格的な舞台に立たせようとするが金がない。最後には幸せになるのだけど、何万分の一の確率で父とめぐりあえたのはよしとしても、さらに母と巡り会うなんてのはもうねぇ。。

けど、往年のアメリカのモノクロサーカス映画を観てるような大名作である。絵が恐ろしいまでにしっかりしており、ハニワのような目に団子っ鼻のはるみも美しくみえる。柿原先生を調べてみると、マンガよりキンダーブックなどで活躍された挿絵画家さんだった。なるほどそれからくる画力の確かさだと納得。他のマンガ作品はどうなのかなあ。。

【追記】
貸本で発行年月日の表記がなくなった一番の理由は、問屋から購入する貸本屋、貸本屋から借りる読者に、発行日からの古さを感じさせないためだったらしい。



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