発行:大阪・日の丸文庫 定価190円 世にも不思議な物語

SFホラー的なものかなと思い、内容もそんな感じなのだが、沼田先生は巻末の「ーおしゃべりー」にて、ミステリー仕立てのファンタジーと称しておられる。そういわれれば、そのほうが的確かなと思える。

地球・二つの物語より以前の作品、不思議なミカちゃんと同時期くらいと思われる。不思議なやさしさのあるこの頃の絵は、なんとも魅力的だ。ミカちゃんそっくりの少女が四郎の妹、雅子として登場する。美加という子も登場するが、こちらは四郎のガールフレンド。

機関士の父を脱線事故で亡くした四郎は一年後、自分も機関士となった。鍵のかかる引出しにしまっておいた父の形見のパイプを駅付近で雅子がひろう。翌日のクリスマスイブ、今度は謎の老人がそのパイプを持っていた。

老人は、列車を運転して北駅へ行けというが四郎はことわる。だが、催眠術をかけられた美加にけしかけられ、四郎は美加とともに北駅へ向う。北駅とは伝説で天国のことだが四郎は信じていなかった。北駅に着く寸前、謎の老人はすべてをあかす。老人の正体は悪魔で、北駅で四郎に会わせると父とやくそくをしていたのだった。列車の屋根で悪魔をふり落とし、四郎と美加は飛び降りる。悪魔は消えみんなは無事。で、めでたしめでたし。

最初のパイプの件以来、きっと四郎の父、坂本作造が登場すると思っていたのだが、それはなかった。悪魔は最初から四郎を催眠術にかけて殺せよと思ったが、、最後に神父さんが考えた説明によると、四次元の世界にはいった四郎は強い意志(心)で悪魔に勝ったのだ、ということだ。